車で走行中に、段差を超えるたびに、足元から聞こええてくる「ゴトトッ」「コトコト」という音。気になりますね。その原因と工賃、部品代についてお話しようと思います。
足回りのコトコト音、ゴトゴト音の原因
経験的には「ボールジョイント」と呼ばれる部品が摩耗し、音を出すというケースが多いです。
ボールジョイントとは
自動車整備士でもない限り、ボールジョイントを見たことがある人は少ないと思います。ボールジョイントを例えるなら、ホテルのフロントに備え付けてある「ペン立て」が良く似ています。
ペンを刺しておく部分の根本がボールになっていて、グリグリ動きますね。あれがボールジョイントです。
ボールジョイントの構造
ボールジョイントは、根本がボールになっているロッド(ボールスタッド)と、ボールの部分を受けるボールシート、ボールを後ろから抑えるプラグと呼ばれるフタ、ダストブーツで構成されています。
ボールジョイントは、手首の関節のようにグリグリ動きつつも、力を伝えることができる、そんな部品です。
ボールの部分は当然ですが、グリースで潤滑してあります。グリースが漏れたり、外から水やホコリが入らないようにするため、ダストブーツと呼ばれるゴムで覆っています。
足回りで使われているボールジョイント
足回りには、様々な場所でボールジョイントが使われています。代表的な部品明を挙げると「ロアーアーム」「アッパーアーム」「スタビライザーリンク」そして「タイロッドエンド」です。
ボールジョイントがダメになると
ボールジョイントがダメになると、コトコト、ゴトゴトという音が足元から鳴り始めます。段差を超えた時、ハンドルを切った時など、特定の運転操作で再現するので、再現条件の説明がしやすい故障ですね。
ボールジョイントの異音を放置すると
ボールジョイントの異音を放置すると、最悪ボールが抜け落ちて、タイヤが変な方向を向いたり、ハンドル操作が不能になることもあります。音が鳴るレベルであっても、車検時の下回り検査で検査員の方から指摘を受け、結果として再検(対策後再度検査)になることもあります。
三菱デリカD:5の足元から異音の事例
ゴト音がする
三菱デリカD:5。視点が高く、運転してはいい車ですね。私も大好きです。ある日そのオーナー様から「ゴトっという音が出て困っている」という申告を受けました。
早速試乗してみると、構内でハンドルを切っただけで「ゴトっ」と音が聞こえます。ロードテストに出ることなくレーンに入れて、フロント回りをジャッキアップし、点検してみました。
ゴト音の点検方法
フロント側をジャッキアップし、左右のタイヤが浮いた状態にします。ハンドルロックしないようにエンジンはかけたまま実施します。
まずは右側のタイヤを左右にゆすってみます。ほんの僅かですが遊びがあって、それから重くなる感じです。上下方向にゆすってみましたが、特に遊びは感じられません。
次に左側のタイヤを左右にゆすってみます。右側と比べて遊びが大きく、コツン何かに当たってから重くなる感じです。こちらも上下方向の遊びはありません。
ハンドルを右一杯に切って、タイロッドエンドを覗き込みながらタイヤを左右にゆすってみると、明らかにタイロッドエンドのボールジョイントがガタついています。
この遊びが「ゴト音」に繋がっているのは間違いなさそうです。
タイロッドエンドの交換
まずはタイヤを外します。次にボールスタッドのナットを緩めます。
ボールスタッドはテーパー(円錐台)になっています。これをオス側とすると、メス側に相当する部分がありますので、そこをヘッドの大いハンマーで強く撃ちます。上手に打つと、数回の打撃でオス側とメス側が分離します。
タイロッドエンドを増し締めしているナットを緩め、ボールスタッドのナットを外し、タイロッドエンドを外します。増し締め用のナットを緩めすぎるとサイドスリップ値が変わりますので、緩めすぎずにしておきましょう。
タイロッドエンドを交換し、逆の手順で組み立てます。一度ロードテストを行い、ハンドルの曲がりがないかを確認して、サイドスリップの測定と調整を行います。
ゴト音は止まった?
タイロッドエンド左右交換の結果、無事ゴト音は止まりました。段差を乗り越えても、ハンドルを据え切りしても、音は再現せず、オーナー様にも大変ご満足いただけました。
整備料金は?
タイロッドエンド交換の標準作業点数は片側1.2ですので、両方で2.4です。私のレバレートが6,500円ですので、工賃は15,600円+消費税です。部品代はタイロッドエンドが1本3,000円なので、2本で6,000円。合計で21,600円+消費税ですね。
今回はタイロッドエンドが素直に外れてくれたので、実際にはそこまでかからずに、全部で15,000円+消費税のご請求となりました。
車重の割にはボールジョイントが細い
三菱デリカD:5で使用されているタイロッドエンドは、車重の割には細いように思いました。トラックで使っているサイズとは言わないにしても、もう少しサイズを大きくして、頑丈な作りにしても良いのかなと思いました。
交換したタイロッドエンド
交換したタイロッドエンドです。今回は左右とも交換しました。
ネジ山が見えますが、これがボールスタッドで、その先はテーパ(円錐台)になっていて、ここがストラットのメス側に刺さります。ひび割れが見えるのはダストブーツで、その中がボールとボールシートになっています。
ボールジョイントを動かしてみると、ひび割れの部分が裂けて、中身を見ることができました(車検NG)。ボールジョイントは軽い力で動き、若干のガタつきがありました。普通はかなり力を入れないと動かない部分ですから、摩耗が進行している状態ですね。
ダストブーツの奥に、ボールの部分が見えますね。かなりの力がかかる部分ですから、摩耗しやすいのでしょう。
足回りの異音を感じたらご相談下さい
ゴトゴト、カタカタ、ゴーッ、サラサラなど、走行中に異音を感じましたら、鈴木ボデーまでご相談下さい。点検と診断を行い、おおよその見積を提示します。