真新しいスーツに身を包んだフレッシャーズを見かけるようになりました。若い人の生き生きした顔、輝く目、弾むような笑い声っていいですね。見ているこちらも若返ります。
ですがそんな若者から、やりがいを搾取し、キャリアを積むべき貴重な時間を無駄に浪費させるような企業があるんです。そんな企業から若い人を救いましょうというお話です。
最初はちょっと小難しい話からのスタートとなりますが、よければお付き合いください。
主開閉器契約と負荷設備契約
電力会社との契約。
工場の場合は、一般家庭のような使い過ぎればブレーカーが落ちるという契約(主開閉器契約)ではなく、工場専用の「負荷設備契約」という契約を結ぶ。
工場には沢山のモーターがある。
コンプレッサーはモーター+圧縮機+タンク。
リフトはモーター+油圧ポンプ+柱と足。
スチームはモーター+ボイラー+高圧ポンプ。
グラインダーはモーター+砥石。
これらが全部同時に稼働したとしても、ブレーカーが落ちない位の余裕のあるアンペア数で契約を結ぶ。これが負荷設備契約である。
電子ブレーカー登場の背景
アンペア数が上がると、月々の基本料金が大きく上がるので、工場としてはできるだけアンペア数は下げたい。しかし電力会社は余裕を持ったアンペア数での契約を求めてくる。
ここで「電子ブレーカー」の登場となる。
アンペア数を下げると、契約したアンペア数を超えた瞬間にブレーカーが落ちてしまう。しかし実際にはすべてのモーターが稼働することはなく、あったとしても、スチームで洗車中にコンプレッサーが回り始める程度で、契約したアンペア数を超えるのは時間にして数10秒の話。
であればその数10秒だけ、ブレーカーが落ちないように持ちこたえてくれればいい。
電子ブレーカーはそういう発想で生まれた製品である。
電子ブレーカーの商売のカラクリ
電子ブレーカーはカネになる。そう気づいた人が「電子ブレーカーのリース」という商売を考え出した。
営業担当を工場に向かわせ、契約アンペア数を下げて月々の電気料金の節約を提案する。
アンペア数を下げるとブレーカーが落ちてしまうが、そのブレーカーを電子ブレーカーに置き換えて問題を解決する。
電子ブレーカーのリース料は下がった電気料金で賄える。リースはレンタルと異なり途中解約できないから、契約期間中は毎月定額のリース料が入る。
電子ブレーカーの耐用年数は10年~15年。耐用年数が来る前に電子ブレーカーを交換し、次のリース契約を結ばせれば、工場が存続している限りリース料が入り続ける。
それが「電子ブレーカーのリース」の商売のカラクリ。
若い人を営業担当者として積極採用
電子ブレーカーのリースで一儲けしようとしたら、何が必要だろうか。電気工事士はいる。電力会社への申請もできる。電子ブレーカーと電材はある。でもそれだけでは足りない。あと必要なのは「営業担当者」である。
営業担当者は誰でもいい。ベテランよりも若い人の方が扱いやすいだろう。電気の事なんか知らなくてもいい。歩合給にしておけば人件費も節約できるだろう。弱肉強食の世界だから、そう考える会社が出てくるのも当然である。
そんな発想の会社だから、若い人のやりがいを搾取して、契約が取れなければ解雇し、常に求人をし続ける。営業部門はそんな運営になるだろう。このように就職にあぶれた若い人を積極的に採用して営業させ、使い捨てる。そんな会社が実際に存在しているのだ。
若い営業担当が来社したら
年に2~3回は「〇〇・〇〇〇〇〇〇〇〇」という会社の営業担当者が営業に回って来る。普段着の若い人が営業にやってくるのですぐに分かる。
だから私は、〇〇・〇〇〇〇〇〇〇〇の営業担当者が来たら、懇々と諭すことにしている。
工場の動力や契約に関しては、私の方が営業担当者よりもはるかに知っている。電子ブレーカーの仕組みも、リース契約のしくみも、私の方が営業担当者よりはるかに詳しい。
最初にこちらの知識を披露して、ウチに飛び込んだことが誤りであったことに気付いてもらう。そこからがスタートになる。
営業担当者に転職を促す
「ろくに就職活動をしなくても、アッサリ採用されたでしょ?」
「しょっちゅう求人を出してるよね?ということはしょっちゅう辞めてるってことでしょ?」
「歩合制でしょ?やればやるほど稼げるって言われたでしょ?でも実際は契約なんて思ったほど取れないよね?」
「ドブ板営業して来いって言われたんだよね?で、足を棒にして、靴をすり減らして歩き回ってるんだよね?それで何件取れた?」
「教育やフォローが全然ないでしょ?」
「その会社での経験、キャリアになると思う?」
「正直転職を考えてるよね?」
「自分の市場価値って考えたことある?資格も特技もないなら若さだけだよ。でも若さはだんだん失われていくよ。」
「やりがい搾取されてることに気づいてるよね?」
相手によって使い分けるが、おおよそ上記の中からいくつかピックアップして伝えるだけで、ほとんどの子が「やっぱりそうでしたか・・・」と肩を落として帰って行く。
まずは会社に疑問を持たせる。そうすると疑問が膨れ上がり「この会社にいても自分の人生にプラスにはならない」と気づき、真剣に自分の人生やキャリアについて考えるようになる。
その結果として退職を選んでもいいし、残るでもいい。それは本人の選択の問題なのだから。
小さい工場なら主開閉器契約で十分
うちの工場で動力と言えば、リフトが1台、コンプレッサーが1台、後はスチーム、グラインダー、カッター位。それを一人が交互に使うので、複数のモーターが同時に稼働することはまずありません。なので負荷設備契約から主開閉器契約に切り替えて、契約アンペア数は最小限にしています。
契約変更一式で電気工事店に支払ったのは、せいぜい2万円。たったそれだけで、月々の電気料金が一気に約3万円下がったのには自分でも驚きました(どんだけ~)。
それでいて、作業中にブレーカーが落ちたなんてことは今まで一度もないんです。だからウチの工場位の規模なら、主開閉器契約への切り替えを私はオススメしています。