故障修理事例

車のキュルキュル|最初だけ音が鳴る異音の正体と対処法と整備料金

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エンジン始動直後に鳴る耳をつんざくようなキュルキュル音。とても不快ですし、何よりご近所迷惑ですね。そのうち焦げ臭くなったり煙が出てくるんじゃないかと思うと、ちょっと怖いですが、すぐに止まってしまうので何となくスルーしてしまう。そんなキュルキュル音の正体と対処法、整備料金です。

車のキュルキュル最初だけ

この症状は、特にスズキの軽でよくみられる症状です。うちの工場ではスズキ車の取り扱いが多いですから当然かもしれませんが、ダイハツやホンダではあまり聞かない症状です。

エンジン始動直後に甲高い音でキュルキュルと鳴り、アクセルをちょっと吹かしたり、アイドリング状態で待っているとウソのように音が消えます。

ベルトの可能性ももちろんあるのですが、経験的には「オルタネータ(ダイナモ、ジェネレーター)のベアリング摩耗」が原因の事が多いです。

↓オルタネータとは↓

キュルキュル車と異音

オルタネーターは、エンジンの回転を使って発電する発電機のことです。エンジンの回転をベルトで伝え、オルタネーターのローターを回転させてその力で発電します。

オルタネーターには「軸」があり、その軸の両端に「ベアリング」と呼ばれる「軸受け」がついています。ベアリングはレールの中をボールがコロコロと転がることでスムーズに回転させる部品です。

軽自動車の場合、走行中は常に高い回転数で回っていますので、それだけベアリングにかかる負担も大きくなります。具体的には、ボールもレールも少しずつすり減って、新品の頃の寸法よりも小さくなり、「すき間」ができるようになります。

このすき間が「キュル音」を生み出すのではないかと私は考えています。

ベアリングが冷えている状態でエンジンを始動させると、すき間が大きい状態で回転させられて、キュルキュル音が鳴る。

ベアリングのボールとレールが温まり、それぞれ寸法が大きくなるとすき間が小さくなり、キュルキュル音が止まる。

それがキュルキュル音のメカニズムなのではないかと想像しています。

ニッサンモコMG22Sのキュル音対処

オルタネーターの脱着

サービスカーとして使う予定のニッサンモコMG22S(スズキMRワゴン)のオルタネーターから、なかなか重症なキュルキュル音が鳴っていました。

発電電圧を測定してみると、14Vを少し超えた位なので、発電電圧としては十分と言えるでしょう。なのでベアリング交換をすることにしました。

MG22Sはエンジン/ミッションをクロスメンバーで支えています。構造的にはとてもいいのですが、オルタネーターやセルモーターを交換する時にはちょっと苦労する構造です。

私は以下の手順でオルタネーターを取り外しました。

  1. バッテリーマイナス端子を外す
  2. F右タイヤを外す
  3. F右ドライブシャフトを外す
    ※ATFオイル漏れに備えて受け皿用意
    ※ABSケーブルを切らないようS字フックを用意
  4. 右側エンジンマウントを外す
    ※ジャッキで支えながら
  5. オルタネーターのアジャストボルトナットを外す
  6. オルタネーターのカプラ、+B端子を外す
  7. オルタネーターの台座とオルタネーターを分離
  8. オルタネーターの台座を外す
    ※プレスでカラーを戻しておくこと
  9. F右ドライブシャフト付近からオルタネーターを取り出す
  10. オルタネーターのベアリングを交換
  11. 逆の手順で組み立てる
  12. 発電電圧測定

オルタネーター取外しは、マウントを外した状態のエンジンを、ジャッキで上下に動かして、一番いい位置で外しましょう。

オルタネーターのベアリング手配

オルタネーターのベアリングは、オルタネーターの前後2か所についています。

プーリー側(ベルト側)が純正品番 23120-4A00E で、定価1,880円+消費税、反対側が純正品番 231120-4A00F で、定価1,200円+消費税です。

私は近くのベアリング屋さん(〇〇伝導機)で購入してきました。

23120-4A00E → NTN6302LLU 450円
23120-4A00F → NTN6202LLB 350円

同時交換部品

以下の部品を用意しておいた方が間違いないかと思います。

  • F右デフサイドオイルシール
  • F右ロアーアームボールジョイントダストブーツ
  • 右タイロッドエンドボールジョイントダストブーツ

オルタネーターのベアリング交換

Youtubeで手順を公開してくれている整備士さんがいらしたので、参考にさせてもらいました。

オルタネーターのベアリング交換後

オルタネーターのベアリング交換後、エンジンを始動してみました。懸念していたキュルキュル音は鳴らずに、エンジンは快調に回っています。発電電圧も十分です。

オルタネーターのベアリング交換の費用

ここまでかかった部品代は税込880円です。今回はサービスカーとして使う予定の車でしたので、実際の請求は発生していませんが、もしお客さんのお車でしたら、工賃だけで税込み11,000円位にはなっていたかと思います。ディーラーに頼んだら、3万円位はかかったのではないでしょうか。

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