「トヨタカローラアクシオのエンジンルームから異音が聞こえます」お客様からこのような申告を受けて、カローラアクシオ(NZE164)の点検と修理をすることになりました。
診断
現場に到着。早速エンジンを始動してみると、エンジンルームからガラガラ音が聞こえます。
エンジンルームからのガラガラ音は、場所の特定が難しい故障の一つです。エンジンルームには、エンジン本体、セルモーター、オルタネーター、エアコンコンプレッサー、そしてウォーターポンプなど、音を立てるパーツが沢山あるからです。
エンジン内部?
ガラガラ音で一番考えられるのは、何らかの原因でエンジンオイルが不足し、エンジン内部の潤滑が十分にできず、金属の部品に油膜ができず、部品同士が当たって発生する音です。
音は甲高い金属音となるので「ガラガラ」よりは「カラカラ」に近い音になります。
セルモーター?
セルモーターから異音がするとすれば、バッテリーの電圧が不足している時の「カカカカッ」という音、エンジンが始動した直後の「ザリザリッ」という音が考えられます。ただしセルモーターはエンジン始動時のみ動作するものなので、アイドリング中のガラガラ音からは除外しても良いでしょう。
オルタネーター?
オルタネーターの異音と言えば、エンジン始動直後に聞こえる「キュルキュル音」です。
オルタネーターから異音がするとするなら、音の質が違いますので、ガラガラ音からは除外しても良いでしょう。
エアコンコンプレッサー?
エアコンコンプレッサーから異音がするというケースはあまり経験がありませんが、電磁クラッチが固着して、ベルトを引きずり、摩擦でベルトがドロドロに溶けるほど高温になったことがありました。
エアコンコンプレッサーが原因でガラガラ音が鳴るとすれば、エアコンが効かない(冷気が出てこない)という状況になるでしょう。このカローラアクシオの場合は普通にエアコンから冷風が出ていましたので、今回の事象からは除外して良いでしょう。
ウォーターポンプ?
運転中、エンジン内部は高温になりますが、あまり高温になり過ぎると、部品同士が固着して、部品が曲がるなどして、最悪はエンジンが壊れてしまいます。なので高温になり過ぎないように、冷却水を循環させて、適度に冷やしています。その冷却水を循環させるのが、ウォーターポンプの役割です。
ウォーターポンプが壊れると、冷却水が循環せず、エンジンがオーバーヒートしてしまいます。その前段階では冷却水が漏れて凝固したり、異音が発生します。異音はザリザリという音が混じったガラガラ音です。
カローラアクシオNZE164のガラガラ音の原因
まずはベルトを外してみます。ベルトを外しても、警告灯は点灯しますがエンジンの始動は可能ですから、問題の切り分けができるようになります。
このお車の場合、ベルトを外してエンジンを始動してみると、ガラガラ音が鳴らなくなりました。少なくともエンジン内部が原因ではなく、オルタネータ、エアコンコンプレッサー、ウォーターポンプのどれかが原因であることがわかります。
それぞれのプーリーを手で回してみると、オルタネーター、エアコンコンプレッサーは共に正常ですが、ウォーターポンプのプーリーに若干のガタつきが見られました。
ほんのわずかなガタですが、ベルトを強く張り、エンジンの強い力でゴリゴリ回転させられるので、大きなガラガラ音となって聞こえるようになります。
ウォーターポンプはベルトで駆動しています。ベルトはエンジンの回転をウォーターポンプだけではなく、オルタネーター、エアコンコンプレッサーにも伝えていますから、それなりの強さで強く張られています。
オルタネーターやエアコンコンプレッサーと比べると、ウォーターポンプは構造上頑丈ではありませんから、真っ先に壊れてもおかしくありません。
修理はディーラーにお任せ
このお車は平成30年式で、まだ1回目の車検が来ていません。走行距離も3万キロの手前。このような場合は「初期不良」と言えるので、ディーラーに持って行くのが正解です。
ディーラーにお願いして二日、ウォーターポンプを対策品と交換してもらい、冷却水も同時交換となりました。もちろんガラガラ音はピタリと止まりました。
金額は無料でした。お客さんの負担にならずに問題を解決できたのはとても良かったと思います。
ディーラーの店長、交換を担当していただいたメカニックの方に、心からのお礼を申し上げました。