仙台の鈴木@道場長です。
苦手な人ほど飛び込む その2です。私は東北学院の工学部出身で、キャンパスが多賀城にありましたから、自転車で大学に通ってました。大学の4年間はメッチャ楽しかったんだけど、特に4年生が一番楽しかった。4年生は教授の「研究室」に配属されて、教授の研究をお手伝いする形で実験し、論文を書き、発表をする。
機械工学科の伊達教授が私の師匠。伊達先生のご専門の一つに「塑性変形」がある。例えば針金があったとして、針金を指でちょっとだけ曲げてから指を離すとビヨン!って元の形に戻るよね。バネみたいに。これは弾性変形。でも90度曲げるような曲げ方をすると、もう戻らない。これが塑性変形。どちらも金属変形という意味では同じなんだけど、学問的には全然別。その区別がないと機械工学科の学生としてはダメダメなのね。
で、機械工学科の必修単位にも「弾性学」と「塑性学」があって、伊達先生は塑性学の講義を担当していた。塑性学の試験はテキスト持ち込み可能なんだけど、塑性学とは全然関係ない弾性学のテキストを持ち込む学生がいるのね。気持ちはわかるけど、持ち込んだ時点で伊達先生的にはアウトなわけ。するとどうなるか。試験中にその学生を大声で批判しまくる訳です。よく通るバリトンの声でそれをやられる。窓がビリビリと震える。やられた学生はたまったもんじゃない。赤っ恥をかかされるわけです。
3年生の終わりに、卒研室への配属を決めるんだけど、最初に学生に希望調査をする。成績のいい学生から優先的に第一希望に配属されるんだけど、伊達研を希望する学生は一人もいない。だから第一希望、第二希望、第三希望のどれも通らなかった学生が最後の最後に配属されるのが伊達研だったのね。そういう学生って、成績が悪いか、留年してるかのどっちか。実際に6名いた伊達研の卒研生のうち、半分が留年組だったしね(笑)。第一希望で伊達研と書いて、一発で配属が決まったのは私だけだった。あまり成績もよくなかったから、卒研室を選べない。どうせ選べないんだったら一番嫌われてる伊達先生に飛び込もうってね。若かったね~(笑)
でもこれが大正解。飛び込んでしまえばほんといい先生。厳しいよ。厳しいけど、それは愛情や優しさ故の厳しさだったのね。卒研生にはホント親身になって相談に乗ってくれる。就職にも強いし。私が日立に行けたのも、伊達先生のコネの強さのおかげ。ホント感謝してます。
卒研室のみんなでお昼を食べに行って、伊達先生が白衣姿のままでファミレス入ろうとするので「先生、保健所の人が来たと思われますからマズイですよ」と言うと「おっ、そうか」と笑いながら白衣を脱いだり、仙台に繰り出して散々飲んだあとボウリングしたり、学生のノリに付き合ってくれるんだよね。ホントいい先生。
そんな厳しくも優しい伊達先生も今や工学部の部長先生をされている。大出世だよね。伊達先生と過ごしたのはたった1年間だけだったけど、すごい先生の弟子だったんだな~と今になって改めて思う。
先生との相性もあるから、誰でも彼でも飛び込んだらダメだとは思うけど、思い切って飛び込んでみればそうそう悪い人はいないって。だから飛び込んでみて。特に若い人。
では~