エンジンオイルの漏れ。根本的な対処が難しく、悩ましい故障の一つです。まずは「ストップリーク」と呼ばれる漏れ止めを入れてみて、とりあえず車検を通し、後日本格対処する感じでしょうか。
エンジンオイル漏れはどこで発生?
エンジンオイルが漏れる箇所は、いくつか考えられます。思いつくままに上げてみますと・・・
- ヘッドカバーガスケット
- カムシャフトオイルシール
- クランクシャフトオイルシール(プーリー側、ミッション側)
- ヘッドガスケット
- オイルパンガスケット
- オイルクーラー
- オイルフィルター
- ドレンコックパッキン
1番目と5番目は、ゴムや紙で作られたガスケットが劣化して、密閉が保てなくなることが原因の漏れです。
2番目はタイミングベルトがある車でまれに見かけます。
3番目がよく見かける漏れ箇所で、クランクプーリーの下から漏れていればクランクフロントオイルシールの劣化、エンジンとミッションの接合部から漏れていればクランクリアオイルシールの劣化です。
4番目はオーバーヒートなどでシリンダーヘッドがゆがんだ場合に発生します。エンジンの外側にオイル漏れとしては出てこないのですが、冷却系統の中にオイルが入り込み、冷却水にオイルが混ざる事で発覚します。
6番目~7番目はオイルフィルターの付け根から漏れるという形で表れます。オイルエレメントのオーリングやオイルクーラーのオーリングが劣化して発生します。
8番目はオイルドレンコックに取り付けるパッキンの劣化や締付不足、ねじ山がナメてしまうことで発生します。
オイル漏れで車検は通らないの?
自動車には、エンジンオイル、ミッションオイル、デフオイル、冷却水、グリースなど、液体や半液体のものが使われています。
車検においては、最後に下回りの検査が行われますが、明らかに上記が漏れている、飛び散っているなどあれば、車検NGとなることが多いです。
目安としては「検査員の目の前でポタっ」があればNGです。
エンジンオイル漏れ止め|最強のストップリークとは
ゴムの弾力を回復させること
ストップリークと呼ばれる、エンジンオイルの漏れ止め剤のお仕事は、ゴムの弾力を回復させることです。
ヘッドカバーガスケットの場合
例えばヘッドカバーガスケットは、ゴムの弾力でヘッドカバーを密閉しています。ヘッドカバーをボルトで締め付けると、ゴムが押しつぶされます。ゴムには弾力がありますから、押し返そうとします。この潰れる時の力と、弾力で押し返す力で、ヘッドカバー内部の密閉を保っています。
ところが、このゴムは経年劣化でだんだん固くなり、弾力が失われます。弾力が失われると密閉が失われ、ヘッドカバー内部のオイルを密閉しておくことができなくなり、オイル漏れが始まるのです。
オイルシールの場合
エンジンには回転する軸が外に出ている部分があります。クランクシャフトがそうですね。このクランクシャフトのエンジン内部と外部の境目に「オイルシール」と呼ばれる部品が装着されています。
オイルシールはゴムの弾力とバネの力で密閉を保っています。身近な例で例えるのは少し難しいですが、ビンに入っているハチミツを丸い棒でかきまぜて、その棒を引き上げる時に、指で輪っかを作って棒についたハチミツをこそげ落とす様子を想像してみて下さい。あの指で作った輪っかがオイルシールです。
オイル漏れ止め、ストップリークの効果効能
エンジンオイル漏れ止め剤はゴムの弾力を回復させること。ガスケットやオイルシールで使われているゴムの弾力が回復すれば、オイル漏れを止められるようになります。
オイル漏れ止め剤はエンジンオイルに混ぜて、エンジン内部の隅々にまで浸透させることで、ガスケットやオイルシールのゴムの部分に漏れ止め剤が触れ、弾力を回復させてくれます。
とは言え、オイル漏れ止め剤にも限界はあります。まずはオイル漏れ止め剤を入れて様子を見るのが最初のステップだと思います。
オイル漏れ止め剤の入れ方
エンジンルームの洗浄
まずは、エンジンオイルが漏れている部分にお湯をかけて、漏れたオイルをきれいに洗い流します。ボンネットを開けて上から洗う方法と、ジャッキアップして下から洗う方法があります。
水をかけてはいけない部分もありますので、分からなければ整備工場にお願いしましょう。
エンジンオイルとオイルエレメントの交換
オイル漏れ止め剤を入れる際は、オイルとオイルエレメントの両方を交換します。そしてオイルを入れる際に、ジョッキにオイル漏れ止め剤を入れるか、オイルフィラーキャップからオイル漏れ止め剤を入れます。
詳しくはオイル漏れ止め剤の説明書をよく読んで、理解した上で行って下さい。
オイルを入れる際は、オイル漏れ止め剤の分を差し引いて入れて下さい。例えばオイルの規定量が2.7リットルで、オイル漏れ止め剤が0.3リットルでしたら、オイル量は2.4リットルです。
アイドリングと走行テスト
まずはアイドリングをして、漏れがないかを調べます。その後数キロ走行した上で、改めて漏れ箇所を見て、漏れがないかを調べます。
新しいエンジンオイル(新油)は透明な飴色をしています。漏れが再発しても真っ黒なオイルが出てくるとは限りませんので、注意してみておいてください。
オイルシール交換時シャフトに傷
シャフト側に傷
オイルシール交換の際に、オイルシールを破壊して取り外すことになります。ところがオイルシール破壊の際に、回転するシャフト側に傷をつけてしまうことがあります。
シャフト側に傷をつけてしまうと、オイルシールが新品になっても、傷の部分からオイルが漏れ始めます。こうなってしまうと「シャフト交換」というかなりの重整備となってしまいます。
スピーディースリーブでシャフトの傷をなくす
シャフトにつけてしまった傷。そこから発生するオイル漏れは、シャフトを交換するしか対処方法がありませんでした。ですがここで「スリーブ」という「薄い筒」をかぶせることで、傷を覆い隠してしまうという、全く新しい対処方法が考えだされました。
製品名は「スピーディースリーブ」です。肉厚の薄い筒状の金属です。片方には打ち込むためのフランジがついています。
傷をつけてしまったシャフトの外径に合う内径のスピーディースリーブを選んで購入します。
今回はスズキキャリィトラック(DD51T)のクランクフロントオイルシール交換の際に、クランクシャフトにつけてしまった傷を覆い隠すために使用しました。
モノタロウの該当ページは↓こちら↓
スピーディースリーブ装着手順
スピーディースリーブの外観
スズキキャリィトラックDD51Tのクランクシャフトフロント側オイルシール接合部に適合するスピーディースリーブの外観です。
用意する部品と特殊工具
新品のオイルシールと、クランクシャフトに打ち込むための特殊工具(単管パイプをカットしたもの)です。付属の打ち込み用金具は深さが足りないので、今回は使いません。
クランクシャフト
クランクシャフトです。オイルシールは外してあります。一段太くなっている部分がスピーディースリーブを打ち込むところです。写真では見えませんが、オイルシールが当たる部分に、斜めの傷がついています。
スピーディースリーブの打ち込み
クランクシャフトにスピーディースリーブをハメ込み、フランジ部分に特殊工具を当てて、ハンマーで打ち込みます。
打ち込む深さは、オイルシールを打ち込んだ時に、オイルシールがフランジに当たる深さです。
オイルシールの打ち込み
クランクシャフト、スピーディースリーブ、オイルシールそれぞれにグリースを塗り、打ち込みます。
オイルシールを打ち込む際は、トラックのホイールナットを外すのに使う、ディープソケットを流用しました。
スピーディースリーブでオイル漏れは止まった?
スピーディースリーブでクランクシャフトからのオイル漏れは止まったのでしょうか?
現時点で数時間のアイドリングを数キロの走行テストを行いましたが、明らかな漏れは止まったように思います。
これから走行テストを重ねて、タイミングベルトケースの下側をよく観察してみたいと思います。
今回使用したスピーディースリーブは↓こちら↓
エンジンオイルの漏れ止め剤は↓こちら↓