※これは2016年にFacebookに投稿した記事をリライトしたものです。
モーターが回る原理、三相モーターのしくみについては↓こちら↓の2本の記事をご覧ください。
コンプレッサーの三相モーターが回らなくなった
工場のエアーコンプレッサーが故障した。
電源を入れると、モーターが「ヴーン」とうなって、圧縮機が全然回ってくれない。ほどなくしてブレーカーが落ちる。
自動車整備工場でコンプレッサーが使えない。これはちょっと困る。いや、かなり困る。
タイヤを外す、汚れを吹き飛ばす、空気を入れる。様々な場面で圧縮空気を使う。
コンプレッサーが故障したら、整備工場の業務はたちまち滞る。だから何としても解決しなければならないのだ。
コンプレッサーの三相モーターの故障診断
コンプレッサーは電気と機械の組み合わせなので、まずは問題が電気的なものなのか、機械的なものなのかを切り分ける。
三相モーターが「ヴーン」とうなって回らないのは、モーター内のコイルが悪いか、圧縮機側が重くなり高負荷となったかのどちらか。
なのでモーターと圧縮機をつなぐVベルトを外し、三相モーターを無負荷で回してみる。
無負荷だとモーターは勢いよく回る。この時点で「問題は機械的なもの」と判断してしまった。
コンプレッサーの故障は機械的なもの?
まずは圧縮機を分解点検してみる。圧縮機はエンジンのピストンと同じしくみで、モーターの回転をVベルトいで圧縮機に伝え、その回転の力をピストンの上下運動に変換し、その上下運動で吸気と排気を交互に繰り返している。
Vベルトが外れた状態の圧縮機を手で回してみる。特に重さは感じない。三相200ボルトのモーターが回転しないなら、固着していないとおかしいのだが、手で普通に回せる。
この時点でもまだ、原因は機械的なものと思い込んでいるので、途方に暮れる。
モーターとVベルトを新調
仕方がないので、モーターとVベルトを新調することにした。モーターの軸の規格が変わり、Vベルトを回すプーリーが入らなかったので、プーリー側の加工も行った。
Vベルトを掛け、バールで適度な張りを持たせた状態で締め付ける。この辺の作業はお手の物。
「ここまでやったんだから、直ってよ」と祈るような気持ちで電源を入れるも、全く症状は変わらない。新品のモーターであっても、ヴーンと唸るだけで、全く回ろうとしない。
原因は欠相だった
色んな人に質問し、アドバイスをもらい、ネットで調べ、モーターやVベルトを取り寄せて交換し、それでも解決しないので、ついに設備屋さんに来てもらうことにした。
これまでの経緯を聞いた設備屋さんは、「あー、それならこれですね」と一瞬で問題箇所を特定し、解決してくれた。
3相交流のうち一本だけ配線がちぎれ、断線。3相交流が2相交流になり、欠相になっていたのだ。
3相モーターを2相で回すと、無負荷なら回る。でも始動トルクがないから、圧縮機を回す力はない。だから「ヴーン」と唸って過電流。
分かってみれば「なぁんだ」なんだけど、設備屋さんが来るまで分からなかったというのが何とも情けない。
コンセント、差さってますか?
モーターが2万円、ベルト3千円、設備屋さんの出張修理費1万円。
これだけ払って、大騒ぎして、いろんな人を巻き込んで、得た教訓。
『コンセント、差さってますか?』だって(笑)
家電メーカーのコールセンターでは、まず感情的になっているお客さんを落ち着かせる、そこからスタートするのだそうです。
家電製品が動かない。電気や機械の心得がある方でしたら落ち着いて対処するのですが、そうでない方はまず「動かないことによる不満」を「感情」という形でぶつけたいんですね。その恰好の相手がコールセンターなのです。
特に家電製品の場合、電池が入っていないとか、コンセントが差さっていないなど、ユーザー側のしょうもないミスが原因の事が結構あるのだそうです。
コールセンターの方は「あーまたか」と苦笑しながらも対応するのですが、そんな時でも言い方に一工夫があるのだそうです。
コンセントが差さっていないことが明らかな場合、「コンセント、差さっていますか?」と尋ねると、お客さんによっては激怒されるのだそうです。「そんな基本的な事、お前に言われんでもわかっとるわい!」という感じです。
なので言い方に一工夫して「一度コンセントを抜いてみて下さい」と言うのだそうです。
コンセントを抜けば、家電製品の内部が一旦リセットされるので、今度は正しく起動するという意味合いもあるのですが、実はユーザーのミスで本当にコンセントが差さっていない場合を考えているのです。
「コンセント、差さっていますか?」ではなく「コンセントを差し直してみて下さい」。たったこれだけの違いで、その後の対応がとても楽になるのだとか。
電話口でお客さんは「コンセントが抜けていました」とは言いません。その代わり「コンセントを差し直したら動きました」と言います。コールセンターの職員も分かっていながらも「それは良かったです」と答えるのですね。
最初の勢いはどこへやら、明らかにトーンダウンしたお客さんに、苦笑しながら対応する職員さん。想像すると面白いですね。